「宇田川さとし」の都議会における発言
東京都議会総務委員会速記録第十七号 より抜粋

平成十八年十二月十一日(月曜日)
第一委員会室
午後一時一分開議


〇宇田川委員 私からは、さきに発表されましたこの東京自治制度懇談会の議論のまとめにつきまして、内容の確認という意味も含めて、何点かお尋ねをさせていただきます。
 自治制度改革について、これまで都議会においては、行財政改革基本問題特別委員会で活発なる議論を重ねてきたところです。また、地方が自主的、自立的な行財政運営を行い、より住民の皆さんの身近な意向に沿った形での施策を行うことができるように、真の地方分権改革を実現しなければならないといった趣旨の意見書を数回にわたって国に対して使送し、強く要請をしてきたところです。にもかかわらず、国のいわゆる三位一体改革では、三兆円の上限移譲が実現したものの、国と地方の役割分担の抜本的見直しについては、本質的な議論がなされていないままでありまして、改革はまだまだ不十分であるといわざるを得ないと思っております。国における改革が進まずにきたのはどうしてなのか、都の認識をまずお伺いいたします。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 これまでの国のいわゆる三位一体改革ですが、中央省庁が既得権益や地方に対する影響力を維持しようとして、例えば、義務教育国庫負担金や児童扶養手当などの国の負担率の切り下げが行われたところでございます。その分地方に税源移譲が行われましたが、これらは義務的な支出であることから、地方の裁量は何ら拡大することなく、単なる地方への負担の押しつけにとどまっており、このように、本来なされるべき国と地方の役割分担の明確化などの本質的な議論が行われなかったことが最大の要因であると考えております。また、地方の意見を制度の改正に反映させる、実効性ある仕組みがなかったことも改革が進展しなかった理由の一つであると認識しております。

〇宇田川委員 国会では、このたび地方分権改革推進法が成立いたしまして、新たな分権改革への第一歩として私も大いに期待をしているところです。しかしながら、改革の推進体制だけが幾ら整備されたからといっても、中身の議論がしっかりなされなくては何の意味もないことであります。年明けには、新法によって、地方分権改革推進委員会が設置をされ、今後三年間で、さまざまな議論がなされていくこととは思いますが、国と地方との役割分担の本質的な議論がこの場でしっかりとなされ、改革を進めるためにも、都としての主張をはっきりと物申すべきであると考えております。今回の東京自治制度懇談会議論のまとめにおいては、国と地方との役割分担について、どんなスタンスで整理していくべきと考えているのかを伺いたいと思います。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 議論のまとめでは、真の地方自治を確立するためには、国と地方が事業について負うべき責任を明確にすべきとして、国と地方の役割分担を抜本的に見直す必要があるとしております。国が担うべき役割につきましては、外交、防衛、司法などに限定して、国家としての責任を全うすべきであり、地方に対する国の過剰な関与は、廃止、縮小していかなければならないとしております。あわせて、現在国が行っている事業でございましても、それぞれの地域の実態を踏まえる必要があるものにつきましては、住民が受益と負担についての選択を行うことによって、より創意と工夫を生かした行政サービスが提供されることになるとの認識に基づいて、地方の役割とすべきとしております。

〇宇田川委員 地方自治法の理念におきまして、国家存立にかかわる分野ですとか、全国的に統一して行うことが望ましい施策などの実施については、国が重点的に担うものとしておりまして、身近な行政はできる限り地方へゆだねるべきだとなっております。しかし、実際には、国が個別の法律や要綱基準などを設けて、さまざまな形で地方の自主的な事業執行に介入をしておりまして、地方の裁量が束縛されてきたのが現実であります。
 今のご答弁では、真の地方自治を確立するためには、国と地方が事業について負うべき責任を明確にしなければならないということでありました。しかしこれまでは、事業に対する責任の所在があいまいだったために、法定受託事務だけでなく、本来地方が、地方の責任で行われるべき自治事務においても、国の関与の余地があったわけであります。今回のこの議論のまとめでは、事業における行政が負うべき責任をどのように考えているのかをお尋ねいたします。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 行政が行う事業は一般的に、制度責任、財政責任、執行責任の三つの責任に区分が可能であるとして、行政がこの三つの責任を同時に負うことで、制度の改善や効率的な事業執行が可能となることから、事業についてのこれらのすべての責任は、原則として同一の主体が負うべきであるとしております。現行制度においては、一連の事業でありながら法律等において、国、都道府県、市町村のそれぞれの果たすべき役割を詳細に定めているなど、地方の事業に対する国のさまざまな関与があることにより、三つの責任について必ずしも同一の主体が負っていないことから、道路、港湾の社会資本整備重点計画に基づく事業でありますとか、社会福祉分野における就業紹介の事業など、事業に重複やむだ、非効率が生じております。こうしたむだなどを排除して、効率的な事業執行の仕組みを構築することが必要であるとしております。

〇宇田川委員 今のご答弁の中に、三つの責任を負うというものがございましたが、今後の三つの責任に基づいた中で、国と地方それぞれの役割分担について、東京都としては具体的にどう位置づけ、整理していくのか、ご所見を伺います。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 これまで国と地方が負う責任は、国家存立にかかわるとか、住民に身近なという抽象的な概念によってしか検討されてきませんでした。今回整理した三つの責任を個別の事業に当てはめることによって、国と地方のどちらに責任があるかを分類するための有効な基準になると考えております。今回の議論のまとめを受けて、今後東京発自治論を作成してまいりますが、その中で、現在国が定めた統一基準に基づいて実施されている事業について、制度責任、財政責任、執行責任に着目して分類し、分権型社会において、地方が担うべき事業を検討してまいります。

〇宇田川委員 先ほども申し上げたのですが、責任の所在があいまいだったと、そのために本来地方が地域実情に即した形で基準を設定して担うべきところを、全国一律の基準に縛られてしまっている事業もあると思います。その一方で、全国的な統一基準が引き続き必要な事業、例えば、近年問題になってます建築物の耐震基準などの事業もあろうかと思います。今お話しがあった三つの責任という新たなる切り口で、国と地方がそれぞれ負うべき責任を明確にし、役割分担を定め、地方が担う部分には、財政責任をも担えるような必要な財源をきちんと移譲することによって、財政的にも自立した形で、事業を執行できるようにすべきだと、あえて申し上げておきたいと思います。
 次に、大都市経営についてお尋ねをいたします。
 少子高齢化や、人口減少が社会問題として進んできております。また、中国を筆頭に、アジア各国における発展も急加速している現状です。こうした背景がある今日、我が国の国際的な競争力が相対的に低下している、そうした懸念はぬぐえないところであります。このような状況下においては、大都市が、日本をしっかりと牽引していく必要があるとも思っているところです。しかし現在、東京ひとり勝ち論などの大変うがった見方が大半を占めて、大都市の財源を地方に回そうという議論が横行しているのも事実であります。大都市の活力を生かして、豊かな社会を実現しようという発想は残念ながら出てきておりません。都市の時代にあって、大都市の活力を最大限発揮できるように、例えば、投資効果の高い都市部に集中投資を行っていくなどのめりはりをつけた戦略も一考ではないでしょうか。こうした仕組みについて、この議論のまとめの中でのご見解を伺いたいと思います。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 人や企業が高度に集積することによって富を生み出しているのが大都市の特徴でございます。議論のまとめでは、委員ご指摘のとおり、大都市がそのポテンシャルを十分に発揮することが、日本の豊かな経済力の源泉になるという認識のもと、総合的かつ一体的な大都市経営の必要性を述べております。
 しかし、現行の地方自治法では、大都市の定義は人口要件しか示されていないため、合併などにより、人口をふやして大都市となる傾向も見られております。議論のまとめでは、大都市は単に人口規模だけではなく、企業の集積や市街地の連檐性などによりとらえる必要があるという考え方から、昼間人口割合、昼夜間人口密度、DID、商業地の地下道の指標、また、地目別都市構成比、歳出構成比、税収等によって、大都市の特性を分析し、独自に範囲を設定しております。その結果、大都市経営が必要な範囲といたしまして、昼夜間人口や企業の集積が高く、市街地が連檐している高度集積連檐区域であり、東京圏におきましては、二十三区及び一部周辺市であるとしております。
 また、大都市経営の主体につきましては、大阪、札幌も含めて、都市の現状を分析し、最も効率的、効果的な大都市経営を行うという視点から、大都市経営の主体を決定すべきであるという考え方も示しております。このように、大都市が果たすべき役割に着目して、実証的に分析した上で、大都市経営の意義等を自治制度に明確に位置づける必要があるとしております。

〇宇田川委員 大都市、とりわけ東京ですけれども、人なり企業なりが集中しております。このことに対して、東京一極集中を否とする議論があるわけですが、これは明らかに経済原則を無視したものだといわざるを得ない、私はそう思っているところです。大都市が、集積のメリットを生かしつつも、集積に伴う弊害を解消すべきであると、そうした見解は全くもって、これまでの都が主張してきたことでありまして、私も大いに賛同しているところです。国際社会においてきちんと確立をして、世界に向けてはっきり主張できる日本を築くためにも、今までと同じベクトルで積極的に取り組んでほしいと願っております。
 さて、今、大都市のポテンシャルを最大限に発揮させるためには、まさに大都市経営を総合的に行う必要があるというご答弁があったわけですが、その経営というものについて、具体的にはどのように行っていくのかを伺います。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 大都市経営でございますが、大都市の集積のメリットを効果的に発揮させる事務としまして、都市づくりビジョンの策定、美しい都市景観の整備、魅力ある都市文化の振興のほかに、都市の魅力の積極的な発信、国際会議、国際大会の誘致などが考えられるとの議論がございました。また、集積のデメリットとしての外部不経済を解消する事務といたしまして、交通渋滞を解消するための道路整備や連続立体交差、住民の生命、財産を守るための都市型犯罪への対応のほかに、災害対策の強化などを行っていく必要があるとの意見がございました。

〇宇田川委員 今現在、地方分権が進んできているんですが、その中で、地方がみずからの権限や財源を確保しまして、そして責任を負って自主的、自立的な行財政運営を行っていくことが肝要だと考えます。大都市経営を行うに当たって、その財政的裏づけですとか、住民の皆さんの意向を反映させることが必要であると考えているんですが、その点についてはいかがでしょうか。

〇川澄自治制度改革推進担当部長 まず、国と地方の役割分担を明確化し、地方に対する国の関与を廃止、縮小することを通して国庫補助負担金を縮小することとあわせまして、国から地方への税源移譲を進めることが必要であるとしております。また、この考え方を原則とし、さらに大都市経営を行うに当たっては、その事務に見合った財源の確保や税負担を含め、大都市の活動を支えている企業や昼間住民を合わせた人々が大都市経営に参画する新たな地域自治の仕組みなど、大都市経営の実効性を担保するための制度が必要であるとしております。

〇宇田川委員 地方分権改革を地方の自主的、自立的−−先ほどからこの言葉を使わしていただいているんですが、そうした行財政運営を可能ならしめる真の改革とするため、地方からの声を強く発信して、国へ正面から物申すべきときが来ておると思います。しかし、本年七月の全国知事会議等では、多くの知事から改革疲れといいますか、そうした発言があったことは残念でならないと思っております。国の財政に頼らざるを得ない現実を打破することなく、さまざまな拘束を受け続ける現行の体制を今後とも続けていくのか、多少の痛みを伴ってでも、改革を推進し、制度的にも、もちろん財政的にも自立した存在を目指していくのか決断すべきときが来ているわけでございます。都は、地方自治体の自立をきちんと確立するべきという立場から、真の地方自治のあり方をしっかりと発信していく、まさに東京発の自治論を展開していただきたいことを強く要望しておきます。
 以上です。